情報通信産業では、プラットフォームビジネスやSaaSビジネスが流行りになっており毎日のように新たなプラットフォームが生まれて死んでいきます。
過去に複数のプラットフォームビジネス(特定業界では著名なサービス)の立ち上げに法務としてかかわってきましたが、マッチングビジネス×法務関連の書籍がなく、時間をかけて各分野の仲介業やあっせん業規制を学んで全体像を理解してきました。
2020年になってプラットフォームビジネスに法務としてかかわろうとする人向けに、プラットフォームビジネスに関する情報をまとめた書籍が出版されました。
【書籍名】 「プラットフォームビジネスの法務」
【出版社】 商事法務
【出版日】 2020年11月12日
【講評】
プラットフォームビジネスといっても横断的に規制する法律があるわけではなく、各事業領域における規制法に基づいて各社が運営しています。
その前提の中で、本書は
- 分野別プラットフォームビジネスの概要と法的論点
- プラットフォームビジネス全般に関する法規制
- 海外法規制の動向
と分類の上で、一般的な解説を省いてプラットフォームビジネスの法的な論点のみを抽出しています。そのため、各分野についてコンパクトにまとめられており、
分野別プラットフォームビジネスとしては
- オンラインショップモール(ECサイト)
- アプリケーションマーケット(アプリストア)
- サービス予約サイト
- 検索サービス
- コンテンツ配信型プラットフォーム(動画配信サイトなど)
- SNS
- シェアリングエコノミー(民泊など)
- マッチングプラットフォーム
- ヘルスケア(オンライン診療・医療情報提供サイト)
- FinTech(クラウドファンディング・送金)
- MaaSプラットフォーム(ライドシェア)
が取り上げられています。
インターネットサービスとしては、現時点で提供されている領域はほぼ網羅されているされています。個別法の解説というよりも領域単位の外観と規制のポイントを開設する方針なのでそれほど当該領域に詳しくなくても理解できると思います。
個人的には、プラットフォームの契約関係が取り上げられており、サービスの仕組みはWEB検索で理解できるけど契約関係をどのようにしてるんだろうという悩みに答えてもらえるところが良いところだと思います。ただ、経験がある人からすれば概要レベルの記載が多いので物足りないと思うので、もう一歩踏み込んで記載してもいいのかもしれません。
プラットフォームビジネス全般にかかわる法規制においては特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律について取り上げるほか、独占禁止法や個人情報保護法などのプラットフォームビジネスに関する各種検討会等について出典がまとめられているのが大変助かります。検討会などが行われている間は認識していたりしますが記憶のかなたに行くことも多いので…
同じような時期にオンラインビジネスにおける個人情報&データ活用の法律実務も出版されており、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律についてはも言及していますが、本書のほうが解説・資料収集が詳細だと思いました。
動きの速い分野なので今後も頻繁に改定されていくことになると思いますが、その都度情報がアップデートされるとともに各分野についての記述が詳しくなっていくといいなと思います。