RKの備忘録

ITベンチャーで特命業務を担当しています。日々の生活や趣味・読書(主に法律関係)などについて適当に発信していきます。

【書庫】「AIと法律の論点」(商事法務)

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昨年の秋から今年の春にかけてAIと法律に関して複数の書籍が出版されました。

AIビジネスの法律実務ロボット・AIと法が概説を知るには良いものの新規事業に関する相談に利用するにはちょっと物足りないなぁと思っていました。

その中で、IoT・AIの法律と戦略を出版されている西村あさひ法律事務所の福岡先生が取りまとめた「AIの法律と論点」を拝読しましたが、現時点ではこの分野ではMustで読んでおくべき書籍と思いました。

 

(書評)

本書ではAIと法律に関する内容について

  1. AIの基本知識    機械学習ディープラーニングに関する基本的な考え
  2. AIの法律(基本編) 知的財産権・AIに関する責任・AIが行った効力・刑事法
  3. AIの法律(応用編) システム開発・個人情報・プライバシー・競争法・労働法・金融法・保険・サイバーセキュリティ
  4. AIと倫理
  5. AIと現行法の課題・未来の法制度への提言

という区分で取り上げています。

 

私が大変参考になったことは

  • AIにおける学習済モデルの著作権は、①AIに関するプログラム部分②機械学習によって調整されたパロメーター部分に区分して検討する
  • 機械学習によって調整されたパロメーター部分については独立して著作物として著作権法上の保護がなされない可能性がある
  • AIに関するプログラム部分と機械学習によって調整されたパロメーター部分を一体として著作物として考えるとしてもパロメーター部分のみの盗用のみでは著作権法上の主張ができるかどうか不透明。
  • 学習済みモデルに関するシステム開発の契約書においては、著作権の対象とならない可能性があることから「調整されたパロメーター部分」の帰属についても規定しておく必要があること。契約条項の条項についても複数掲載されています。
  • AIの開発ではOSSが利用されることが多いですが、OSSの規約次第ではOSSを基に開発した周辺領域のソースコードの開示や著作権法の主張ができないことがあること
  • AIを利用させるサービスについても、クラウドサービスである限り秘密管理性・非公知性を満たすことで営業秘密として保護される可能性がある一方で、機械学習のもとになるデータについては第三者と共有することで秘密管理性が認められない場合があること

といった著作権に関する部分になります。

その他の部分も他の書籍と比べると詳細に書かれてはいるので、法律事務所へ相談するにしても当たりをつけることができます。

AIに関しては各分野1冊の書籍を出すほどの議論がされていない印象を受けていますが、さすがに最大手の法律事務所だけあって検討が進んでいるんだなぁという印象を受けました。

 

著作権法不正競争防止法が2019年1月に改正されることから、一部変更が生じる部分もあるかもしれません(例えば、AIに使う写真などの著作権に関する例外規定)。

ただ、AIと法律に関する基本的な部分については変更がないためしばらくはこの分野の基本書として君臨していくのではないかと勝手に思いました。

AIの法律と論点

AIの法律と論点