年末年始の長期休暇において海外でゆっくり過ごすとともに、昨年買い溜めた書籍を読み漁っていました。
日本のビジネス(法務)の領域ではニッチであるIT・デジタルビジネスに関する書籍も増えてきた印象ですがデジタル証拠の法律実務Q&Aの姉妹本が出版されましたのでこちらを拝読しました。
【書評】
デジタル法務との題を冠していますが、中心は情報管理(個人情報を含む)に関する内容が3割から4割を占めており、全体を通して情報ガバナンス(企業における情報の活用など)になります。
本書において特に気づきになったこととして
- 不正調査・第三者委員会におけるデジタル資料の調査方法について、ドキュメントレビューの手順とAI活用について照会していること(アメリカだとディスカバリーがあるため日本よりも進んでいる)
- 電子契約についてクラウドサービス上にアップロードした電子文書に署名の指名とメールアドレスを登録すると登録したメールアドレスに対してURLが送信されログインし契約を承認するタイプ(日本国内だとクラウドサインなど)について、「本人だけが行うことができる」という要件を満たさず電子署名法上の推定されない場合でもIPアドレスやアクセス履歴、アカウントへのログインなどにより成立の真正が容易になること
- クラウドサーバ上に保存した情報についてサーバが海外に置かれている場合には、主権の範囲を超えた国家権力の行使になる可能性があるため、捜索差押令状のみで対応できるわけではない(海外向けに日本国内のサーバを利用してクラウドサービスを提供する場合には海外における差押えに対応しなければならないか否かの議論。)
というあたりでしょうか。
特に電子契約については導入や他社からの依頼の際に悩むことが多いです。類書ではあまりこの点踏み込んだ記載がないので今後の導入に向けて大変参考になりました。
また、クラウドサーバを利用したサービスに情報を保存することが普通に行われているため、情報の保存(場合によっては移転)についてもグローバル展開させるためには配慮が必要であることは注意が必要になります。
弁護士がクライアントから相談を受けた場合に、どのように回答するべきなのかというような視点(ポッドチャットなど)も多く企業の担当者向けかというと迷う部分もあります。
ただ、IT・デジタル領域は法務の中でも比較的ニッチなので余裕があれば目を通しておいても良いかもしれません。