データ戦略の重要性が叫ばれるなかで、法務分野でもデータに関する相談が増えていますが、この領域は様々な法律に規定されているためこの書籍というものがありませんでした。
今回、AIの法律と論点やIoT・AIの法律と戦略〔第2版〕の筆者である福岡先生がデータの法律と契約をまとめた本を出版されましたので拝読してみました。
【書評】
本書は、次の5つに分かれています。
このうち、パーソナルデータに関する部分は、次世代医療基盤法、海外の保護法規制を除くとAIの法律と論点で多くがカバーできるため、本書で読むべき部分はそれ以外かと思います。
データについては、アクセスできるものが自由に使えるのが原則であることから、アクセスをどのように制限するのか(管理上の問題)、アクセスできるものにどのような制限をかけるのか(契約上の問題)の二つがあります。
データについては、著作権・特許権等の知的財産権によりカバーされる範囲が狭く、イノベーションの観点からデータを第三者に開示していくことからも保護するための仕組みづくりが大切になります。
そのため、データに関する契約については、経済産業省が「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を公表しています。
基本的な内容はそれに準拠した(そもそも筆者も検討会の委員)形になっています。
まだ始まったばかりの分野なので、仕方ない部分がありますが交渉を行うにあたっての比較考慮事項が明確になっているのと、P338及びP374に検討のポイントをまとめているため、それをチェックポイントとすれば現時点で必要最小限の契約事項漏れがなくなります。
法律でカバーできないために契約でデータを保護する要請が強くなりそうなので、この部分についてはガイドラインを含めて読み直しても良いかもしれません。
データと独占禁止法に関する記述など、取扱い分野は最先端で面白いなぁと思う反面で、日本国内においてはあまり議論がされていないため、フワッとした記述が多いのも事実になります。
ただ、現時点でこのあたりが到達点ということを知っておくことは実務家として必要だと思いますので、その限りにおいては読んでみる価値はあると思います。