RKの備忘録

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【書庫】「働き方改革とこれからの時代の労働法」(西村あさひ法律事務所労働法グループ 商事法務)

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2019年4月1日から働き方改革関連法案のうち労働時間規制などがスタートします(中小企業については2020年4月1日)。

改正法の理論的な部分については菅野先生の労働法が改訂されるのを待っているところではありますが、現在動いている議論を広く抑えている本書を拝読することにしました。

 

【書評】 

働き方改革として取り上げられた①時間外労働の上限規制②高度プロフェッショナル制度③兼業・副業④テレワーク⑤同一労働同一賃金に加えて、労働契約の無期転換や障がい者雇用など最近の労働法のトピックを広く抑えた書籍になります。

労働法についてはこれまでも判例の積み重ねによって構成されている部分が大きいため、どうしてもグレーな部分が残ることになりますが、法令順守の点でリスクテイクのできない大手企業から相談の寄せられる西村あさひ法律事務所の有志が、各テーマを検討しています。

 

本書において気づきになった部分としては

  • 兼業副業においては、自社の情報漏洩だけではなく、労働者が他社の情報を持ち込むことについても個々の労働者が行わないように注意する必要があること
  • シュアリングエコノミーの運営者であっても、形態(利用企業と個人の間に労働契約が成立する場合)によっては労働者供給事業に該当する可能性があること(※)
  • 社内チャットやグループウェアを24時間利用することができる企業も多いと思いますが、こちらについても指揮監督下にある場合には割増賃金の対象となるので会社としてポリシー(就業時間外は返信義務がないことを明記するなど)を定めておく必要があること
  • 従業員の情報をAIなどを用いて活用する場合には、労働法分野においても個人情報やプライバシーに関する議論を深める必要があること

になります。

 

各法律と審議会・検討会の内容をよくまとまっている印象を受けます。検討会などの各報告書を読めばわかることも多いのですが、労働法を専門的にやっていない限り時間的に厳しいのでその場合にはこちらを読むことでその隙間を埋めること(必要に応じて報告書を探すこともできる)ことが可能になります。

 

なお、労働時間に関しては過重労働防止の基本と実務が実務担当者向けで詳しくかつ分かりやすく解説されているため、そちらをお勧めします。

 

※自己の労働者を第三者の指揮命令のもとに役務提供をさせる場合のみを労働者派遣としているため、支配従属または労働契約がある者について供給契約に基づき第三者と労働契約が締結する場合にはすべて労働者供給事業に該当することになります。

働き方改革とこれからの時代の労働法

働き方改革とこれからの時代の労働法

  • 作者: 菅野百合,阿部次郎,宮塚久,西村あさひ法律事務所労働法グループ
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2018/11/29
  • メディア: 単行本
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