RKの備忘録

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【書庫】「HRテクノロジーで人事が変わる AI時代における人事のデータ分析・活用と法的リスク」(労務行政)

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最近は人事領域でもクラウドサービスが導入されていますが、人事情報の大部分が個人情報であるにもかかわらず、意外とこの分野に焦点を当てた書籍がありませんでした。

今回、偶然ながらHRテクノロジーに関して労働法・個人情報保護法を取り上げている書籍を見かけたので「HRテクノロジーで人事が変わる」を購入の上で拝読いたしました。

 

【書評】

本書は、HRテクノロジーの現状と可能性、役割別導入事例とそのリスク分析(労働法・個人情報保護法を含む)をメインに取り上げています。

 

人事領域においては「勘と経験」に基づく取り組みが中心であったことから数量分析などの導入が遅れていましたが最近はデータのある大企業と技術力のあるベンチャー企業の両方で取り組みが始まっています。

本書では、大企業における取組として、日立製作所における採用ポートフォリオに関する分析やパーソルホールディングスの「退職予測モデル」、ソフトバンクの書類選考のAI化、ベンチャーの提供するサービスとしてミライセルフやリンクアンドモチベーションなど新しい取り組みが分析されており今後の人事領域での情報解析に大変参考になります。

 

リスク管理や法律といった部分では

  • HRテクノロジーを用いて評価や人事異動を行う場合には、HRテクノロジーの全てを理解する必要があるわけではないが、どの要素を重要視しているのかというレベルでの説明責任があるのではないか
  • 従業員個人からの入社時における個人情報の取扱いに関する同意(多くの場合には人事・労務管理のため)では不十分ではないかという指摘(ただ、利用目的は、個人情報保護法上は個別の取扱い方法の明示まで求められるものではなく最終的な利用目的を明示することで足りると考えられている点は注意)
  • 個人のセンシティブ情報(要配慮個人情報)に関する推知が生じうることに対する懸念(個人情報保護法自体は推知した情報を要配慮個人情報の対象としていないが取扱いについては注意が必要)

という今後HRテクノロジーの導入にあたっての注意事項を知ることが可能です。

 

本書は、人事・労務やその周辺領域に関わる方向けの書籍のため、難しい法律論はありませんが、法律以前にそもそも何が起きているのかという基礎情報を知るためには法務担当者にとっても有益な書籍だと思います。

もしかすると人事担当者が購入していたりする可能性があるので、それを借りて拝読するのでも良いかもしれません。

HRテクノロジーで人事が変わる

HRテクノロジーで人事が変わる