これまで企業法務の代表的な分野である独占禁止法については 縁がありませんでした(下請法や景品表示法という派生した分野のみでした)が、そろそろ本丸の独占禁止法を勉強しようと思いました。
独占禁止法〔第3版〕も併せて購入はしたのですが、わかりやすそうなガイドラインに関するこちらの書籍から拝読しました。
【書評】
独占禁止法には個別分野を合わせると30以上のガイドラインがありますが、そのうち通則的な役割を果たしているののが私的独占分野の「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」、流通取引分野「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」、不公正取引方法「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」になります。
その中でも、平成29年に大きく改訂された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」について公正取引委員会の改正にかかわった担当者らが解説するものになります。
「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」について、項目建てぐらいしか知らない立場で拝見しましたが
- 「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の本文を引用したのちに、解説を行う形式を採用しているため、ガイドライン自体を読んだことがなくても全体を理解することは可能
- 原則論(基本的事項)と例外が分けられており、構成としては分かりやすいが原則論の解説部分についてはガイドラインの焼き直しの部分も多いのでもう少しまとめて記載することも可能だったかもしれません
- ガイドラインで取り上げられている事例については審決を図解で取り上げており、初めて読むにあたり問題点を理解しやすい
- 繰り返し問題になる要件(例えば市場閉鎖効果)については初回の記載の参照する形なのでページ数ほど読むにあたってボリューム感はない
ガイドラインが抽象的なため、理解するとともに第三者に説明するためには具体的な事例を取り上げている本書は参考になります。
ガイドラインの作成担当者の意思を理解するという部分では大変参考になるのですが、既に独占禁止法に関する実務を行われている方からすれば当然知っているよということも多いような印象はぬぐい切れません。