以前購入し拝読していました業務委託契約の基本と書式とライセンス契約の基本と書式のシリーズにおいて新たに「データ取引契約の基本と書式」出版されました。
データの取扱いに関する契約が増えているものの従来のライセンス契約の延長線上のようなものが多く悩みもありましたので早速購入して拝読しました。
【書評】
本書は、前2冊と同様に
- データ取引契約の基本知識
- 契約条項の文例と機能
- 契約書ひな形集
という構成になっています。
データ取引契約の基本知識では、今年5月に施行されたGDPRやAI・データ契約ガイドラインについて解説をしていますが、GDPRについては単に概要を述べるだけではなくEUが公表している標準契約にも触れている部分が特徴的ではあります。
また、データそのものが有体物ではないことから所有権の対象とはならず、また知的財産権としての保護が難しいためは契約作成においてどの範囲まで想定しておくのかということと繋がるため前提知識は重要になります。
契約条項の文例と解説では、条文ごとに解説を加える形で次の9つの契約ひな形を取り上げています。
①データ提供契約
②匿名加工情報利用許諾契約
③データ消去・廃棄委託契約
⑤情報提供契約
⑥API利用許諾契約
⑦IoT規約
⑨秘密保持契約書
データ提供については利用範囲や派生データなどの取扱いについて決めなければならないものが多いですが 、データの取扱いという側面から解説しており大変参考になります。
APIについては銀行法の改正もあり活用が見込まれることから、今後利用規約についても様々なものが登場しますが、先行者の利益があるので一旦はこちらが金融業買いが定めているものと合わせてスタンダードになっていくのかもしれません。
※ 無償でAPIを提供する場合には、読み込めない場合及びサービスに影響を与えた場合の免責と当社に負荷を与えないことのみでも現時点では十分かもと思うところではあります。
また、契約書ひな形集として解説はないものの
①個人情報の取扱いに関する同意書
②プライバシーポリシー
③秘密情報管理規定
を取り上げています。
今後、しばらくの間はデータ取引に関する契約書ひな型をという場面になると参照されるといった書籍になっていくかもしれないですね。