インターネット関連の会社に転職する際に、前職とは業種が異なることからとりあえず利用規約について勉強しようと購入したのが良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方になります。
このたび6年の期間を経て改訂されましたので、初心に戻って拝読させていただきました。
【書評】
本書の対象となるのはウェブサービスということで、利用規約・プライバシーポリシー(個人情報の取扱い)・特定商取引法上の表示の3パターンになります。
法務担当者というよりはウェブサービスの責任者向けに「利用規約」について最低限の理解(知識)をもってほしいというコンセプトで制作されていることから
利用規約を形だけ作れても、その中身や自社の事業に関係する法律を責任者となる自分自身が理解していないのは、やはり問題です。(p23)
というように利用規約の体裁を整えるだけでなく、ウェブサービスを提供する事業の責任者に向けて難しい議論はスルーして平易な表現にて記述されています。
とはいえ、必要な点を網羅しており、「特定商取引法に基づく表示」については表示が求められる11項目を明示しているなど
私自身が日常的にウェブサービスを取り扱っているため
- 課金を予定するサービスにおいては、誰から課金するかによって規制などが変わってくるため契約関係の整理が必要(図を描いてみる)
- 禁止条項のうち「当社が不適切と判断したとき」は有効性はともかくカスタマー対応においては全てを包括する概念として使いやすい。
- 広告メール(電子メール)はオプトイン規制があるのですが意外と忘れがち(既に登録されたものに対して第三者の広告メールを配信することを希望する事業責任者が多い印象があります)
- 利用規約を変更した場合には過去の利用規約についてもアーカイブしておく必要があること(意外と初期のプロダクトでは漏れています)
- 他の同種のサービスにおいて取り上げている項目を参考にすること(トラブルなどで追加された可能性あり)
といった部分について非常に共感することが可能です。日常的なウェブサービスに関する相談のうち、代表的な部分はこの書籍でカバーできていると思います。
また、最近はプラットフォームを標榜するサービスが増えていますが、こちらについてはプラットフォーマーとしての責任や独占禁止法による制限など以前は意識されていなかった部分についても法執行が生じています。
本書ではその部分についてもアップデートしており
・ほかのプラットフォームでアプリを販売しない旨の規程を利用規約に設ける。
・ほかのプラットフォームでアプリを販売する事業者を排除する
といった内容が独占禁止法に抵触する可能性があることにも言及しています。このあたりは排他的取引条件として公正取引委員会も厳しく取り締まる方針のようなので注意が必要です。
ウェブサービスの責任者向けといいながらも法務担当者が読んでもなるほどと思える本書は、これからウェブサービスに関わる人のバイブルになるのではないでしょうか。
是非購入して1冊手元に置いておくことをお勧めします。
【改訂新版】良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方
- 作者: 雨宮美季,片岡玄一,橋詰卓司
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2019/04/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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