たまたま複数の子会社(事業は何もやっていない)の解散手続きを行うことがあり、勉強しようと思って購入したのがこちらの書籍になります。
読んでわかったのは、整理。清算。再生手続とはあるものの主に事業承継をターゲットにしている書籍になりますので、題名から受ける印象と内容が異なるので注意が必要になります。
【書評】
本書では、「会社の終わらせ方」に焦点を当てており
①積極的な終わらせ方(事業の拡大又は継続を目指す)
会社合併・会社分割・会社売却・民事再生・整理
②消極的な終わらせ方
破産・特別清算・任意整理
③その他の終わらせ方
廃業・解散・会社売却(株式譲渡)・株式売却(一部)
と分類して①について事業承継の文脈で②について法定手続を紹介しています。
事業承継については類書が多数出版されていますが、本書の特徴としては「事業譲渡先の見つけ方とその事前準備」を1テーマとして取り上げています。
相談する先ごとのメリットとデメリット(例えば民間会社であれば手数料が発生するなど)の注意点とともに、相談をするにあたって必要となる書類一覧があるので、普段M&Aに関わらない法律事務所等においても事業承継を考える顧問先があればこのリストを渡せば一旦必要な情報は足りるかと思います。
終わらせ方がテーマのため、通常は取り扱わない破産・民事再生・会社更生も取り上げています。各手続きについての実務的な注意点(民事再生だと抵当権等の担保権が対象とならないなど)を掲げるほか概ね次のような利用の用途の分類をしています。
・私的整理(金融機関に関する債権が対象)
事業では運転資金が確保できるものの、過去の借入の返済などで資金繰りが厳しい場合。メインバンクの協力が必要なほか多数決ではないため、1社反対すると成立しない。
・民事再生
事業では運転資金が確保できるものの、過去の借入の返済などで資金繰りが厳しい場合。担保権が設定されている場合には民事再生手続きとは別に債権者と協議が必要になる。期間が6か月程度で終わるため
・会社更生
事業では運転資金が確保できるものの、過去の借入の返済などで資金繰りが厳しい場合。期間が1年程度かかるほか、管財人の下で再建手続きを行う。予納金が民事再生に比べて高い。
起業を取り上げた書籍は多数ありますが、「終わり方」はなかなか教えてもらえないので、その意味では「会社の終わり方」をまとめた本書は特徴的として面白いなぁと思いました。