M&A関連の書籍の出版と改訂が続いていますが、事業再生などのスキームで良く実行される事業譲渡についてまとめた本書についても改訂されました。
【書評】
本書は事業譲渡に関する規律(会社法21条~24条)と手続き(会社法467条~470条)の解説に加えて、事業譲渡に関する各規定ごとに複数の参考条文を掲載しています。
契約書に関する書籍は
- 条項の解説を1種類のひな型を基に行っていくパターン
- 一般的な条項の解説をしたうえでひな型を掲載するパターン
のいずれかを採用している場合が多いです。
しかし、本書の特徴は、両者のいずれでもなく一つの条項に3つ・4つのバリエーションを提示しているところです。
契約書のひな型を作って実際に運用していく場合には様々なバリエーションを知っておきたいところですが、なかなか1冊では完結しないところがあります。そういう意味では本書は条項を見比べることができるという利点があります。
事業譲渡に関する規律においては、40ページ程度ですが事業譲渡において問題となる商号(屋号)の継続利用などについて裁判例を多数取り上げるなど事業譲渡について一冊で広くカバーできています。
他方で、以前の版からですが学説等について引用文献の列挙も多いのでライトな感じで事業譲渡にかかわっている方からすれば読み飛ばしてもいいのかもしれません。
また、事業譲渡契約そのものには民法改正の影響もないとのことです。
そのため、旧版から買い替える必要まであるのかというと悩ましいところではありますが、事業譲渡に関して売れている本でもあるので買い替えてもいいのかもしれません。