法務部門では、契約審査のスキルも当然必要ですが社内の調整するというスキルが必要になります。
法務部門の契約審査業務が品質の均質化のためにチェックリスト化されている場合(大きな法務部門の場合がほとんど)を除き、修正・交渉について事業側に理解がなく社内調整をすることが求められます。
本書は社内調整のヒントまでということでしたので、購入の上で拝読していました。
(書評)
まず、本書は特定の契約類型を前提とするのではなく、法務担当者(特に経験のない又は経験が浅い人)が具体的なケースで対応(リスク)を理解し、社内調整をお願いする場合のポイントを弁護士目線で伝える内容になります。
そのため、入門書的な内容になっているため
- 契約書の構造を取り上げ、経験が浅い担当者が契約審査の基本的な考え方を通読して理解することが出来ること
- どのような類型の契約書でも見かける条項を取り上げ基本的な部分について理解をさせること
- 法務部門としての体制構築に関するアドバイスがあること
という特徴があります。初学者(新任担当者)が勉強するには網羅的であり、かつそれほど難解な記述もないので理解しやすいかと思います。
今回は社内調整のヒント部分を参考にしようと拝読しましたのでその部分についてコメントすると
- 修正にはなぜ修正したのかのコメントを残しておく(→コメントごと先方に伝わる可能性があるのでファイル外でコメントする)
- 非定型文書については法務部門が目を通すことが出来る体制を構築しておく必要がある(→理想ではあるものの十分なリソースが…)
など契約審査体制全般についてを、社内調整のヒントとして挙げられています。
法務部門は十分なリソース(人員・予算)を割り当てられることは少ない中で、結果的にリスクをちゃんと周知し法務部門がちゃんとチェックしましょうという当たり前のことを社内調整のヒントとしているのは消化不良の側面が強いです。法律事務所の弁護士が法務部門のことを知らないなぁという印象を抱いてしまいます。
個別の条項レベルでの解説についてはそもそも社内調整のヒントが掲載されていない部分も多く全体的に消化不良感はぬぐえません。
なお、本書は特定の契約類型を対象としていないのですが、このシリーズとして業務委託契約書、不動産売買・賃貸借契約についてそれぞれ2019年6月に出版が予定されているようですので7月にそちらも購入してみようと思います。