以前は店舗を経営する会社で法務の仕事をしていたため、対面トラブルへの支援を行うことが多かったのです。
ただ、企業向けビジネスの会社に転職し、さらに最近は事業法務から離れているためトラブルやクレーム対応の最前線にいないのですが、時々経営層まで上がってくる案件に対応することがあります。そのため、知識・経験の確認のために本書を拝読しました。
【書評】
具体例とそれに対する対応方法を示している本書ですが、東京弁護士会の民事介入暴力対策委員会等で実務を対応されている弁護士が共同で執筆していることから、
- クレーム対応に関する原理原則論から検討されている。
- 各事例が仮想ではなく現実的な内容となっている
- 法律の限界部分については、実務(現場)的な取り扱いについても取り上げている
- クレーマーなどへの通知分を含めて書式が多い
という特徴があります。
Q&A形式の書籍は事例設定が全てですが、クレームやトラブルを担当する者が「こういうのあるよね」と思える事例をどれだけ取り上げられるかが大事だと思います。
その限りにおいては、どれもクレームとしてありがちな事例なので理解しやすいのではないでしょうか。
また、クレーム・トラブル対応の原則である
- 社内対応窓口を統一する
- 事実確認を行う
- 対応方針を決めてそこからぶれない
- 不当(過大)な要求は拒絶する
に基づき各Q&Aで何をすべきかということが論じられていることから、日常的に対応している者からすると納得感のある内容なのではないでしょうか。
また、他の書籍ではあまり拝見しない部分として
- コンビニ(スーパー)において暴力団員への飲食物を販売することは問題ないのか
- 本人に同意を得ることなくクレームの録音をすることが可能なのか
という部分がありました。
クレーム・トラブル対応する部門に配属されたばかりの方が読むには少し難しいかもしれませんが、マネージャーやある程度の経験者であれば読んで理解してほしいレベル感の書籍になります。
悪質クレーマー・反社会的勢力対応実務マニュアル─リスク管理の具体策と関連書式─ (リスク管理実務マニュアル)
- 作者: 藤川元,市民と企業のリスク問題研究会
- 出版社/メーカー: 民事法研究会
- 発売日: 2018/10/22
- メディア: 単行本
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