旧商法から株式会社に関する部分が切り出されて会社法が制定されたときに、組織再編時の対価の柔軟性向上があげられていました。
ただ、実際にM&Aになると現金を支払うことが多いので、株式を対価にすることはほとんどありません。株式対価といっても株式交換しかイメージがなかったので購入して拝読いたしました。
【書評】
本書は、産業競争力強化法において規定される会社法上の現物出資の特例(株式の発行又は自己株式の処分において第三者の株式を払い込みの代わりにする)について解説したものになります。
株式交換は、相手方(買収先)が日本法人である必要があるので海外法人の場合には利用できません。
第三者割当において現物出資をするという方法もありますが、検査役の検査と取締役の払込担保責任の問題があり利用しにくいところもあります。
そのため、産業競争力強化法において特例を定めることにより、株式対価により事業再編を図ることができるようにしています。
産業競争力強化法の特例の適用を受けるためには、事業計画について経済産業大臣の認定を受ける必要がありますが
平成26年から平成29年度
- 事業再編計画 53件
- 特別事業再編計画 5件
平成30年度以降
- 事業再編計画 8件
- 特別事業再編計画 0件
とそもそも認定自体が低調な状態です。しかも個別に認定を受ける目的を確認すると不動産登記に関する登録免許税のためなので株式対価の特例という利用方法は難しいのかもしれません。
本書は、200ページ前後の書籍ですが、約100ページは産業競争力強化法に関する資料のため実質的な内容は100ページ程度です。産業競争力強化法自体の解説をしてはいるものの経済産業省の解説の範囲を出てはいません。
株対価でのM&Aを今後普及させたいという意思は感じるのですが、現時点では自費で買いべき書籍ではないと思います。