民法改正まで1年を切りましたが、相変わらず民法改正と契約書に関する書籍の出版が相次いでいます。
既に何冊も民法改正関連の書籍を購入していますが、飽きることなく購入の上で拝読させていただきました。
【書評】
「法務担当者のための契約ハンドブック 」という題名からは、入門書的な印象を受けます。しかしながら、Q&Aは既に一定の知識がある人が民法改正について知りたい(確認したい)という場合の需要にこたえるものになっています。
特に気になった部分としては
- コンサルティング契約において、受任者に帰責事由がある場合であっても割合に応じて報酬請求権が認められた(改正法644条の2)ことから、途中で解除になった場合の報酬等について取決めを行っておく必要があること
- 請負契約において、瑕疵担保責任が契約適合責任に統合される結果、現行634条1項但し書きにより、瑕疵が重要でなく修補に過分の費用を要する場合は修補をもとめることができなかったのですが改正で同条が削除されるため必要であれば追記しておく必要があること
- 瑕疵担保責任において、代償・修補に加えて追完請求権が認められることになるが特定の対応を求める(種類債権の場合など)ためには、契約上で限定しておく必要があること
あたりですが、ほかの書籍でも触れられているので多くの会社が対応してくる部分かと思います。
本書では、他の書籍では見かけない類型の契約についても解説がなされています。
例えば、販売代理店契約については、瑕疵担保が契約不適合責任に変更になることによる修正はあるものの契約類型独自の修正項目はないようです。
また、ソフトウェア開発委託契約についても取り上げていますが、こちらも瑕疵担保責任など他の類型で見かける項目を除くと取り立てて修正対応が必要な範囲はあまりないようです。
多くの契約書の類型が取り上げられており、コンセプトとしては良いものの参考文例が少ないことから本文のみで理解しにくいところが若干の難点になります。
そういう意味では、既に民法改正についてある程度理解しているよという中級者から上級者向けなのかもしれません。