中小企業のM&Aを年間約500件前後取り扱う日本M&Aセンターに所属する税理士・公認会計士が同社の知見をもとにM&Aシリーズの応用編として本書を出版しています。
事業承継に関する相談も増えつつあり、主要なプレーヤーである日本M&Aセンターの考えるM&Aの手法について理解しておくことも必要と考え本書を拝読しました。
【書評】
書店で 手に取ってパラパラとめくってみると比較的平易な内容の書籍に見えます。
ただ、実際に読んでみるとM&A実務必携シリーズの応用編という位置づけであり、法務・会計・税務について一通り知識のある方向けの書籍になります。
本書は第1部としてM&Aに関する手法とTipsを取り上げています。
この部分では、M&Aで利用される事業譲渡・株式譲渡・会社分割等を取り上げ簡単な手続きと会計税務が取り上げられていますが、税務会計の知見がないと迷子になりかけて読み飛ばすことになります。また、法的手続きに関する記載は薄いです。
Tipsとして税制適格や不動産取得税などM&Aのスキーム選定において費用面で問題になるテーマを上げています。
不動産取得税(地方税)については前職時に特例にお世話になりましたが、M&Aの手続きにおいて税務に関する費用はスキーム選択に大きな影響を与えることになるので法務担当者もざっと理解しておくといいかもしれません。
第2部では実際に日本M&Aセンターが取り扱った事例をもとに、スケジュールやその背景などを取り上げてM&Aの方法選択の実例を示しています。
成功例として11の事例を取り上げていますが、それぞれ当事者の要望を踏まえて実施されているものの、どれも経営者に残る税務上の手取り金額を最大化するという視点で考えられています。
成功例を取り上げているので当然といえば当然ですが、スキーム選択の重要性を感じる各事例になります。
「中小企業M&A実務必携」と名付けれられいますが、個別の記述については他の書籍でも触れられていることからMUSTという感じではありません。ただ、第2部はM&Aに関わる者として勉強になることから、その前提で購入してみても良いかもしれません。