○○×テクノロジーというのが流行っておりFinTechについては既に盛んに議論されています。
人事領域についてのテクノロジーについても取り上げられる機会が増えましたが、職業安定法が2017年に一部改正されたほかは雇用分野ということで議論が進まないHRTech関連について、情報管理の観点から書籍が出版されました。
【書庫】
人事情報の管理については個人情報保護法に基づく個人情報という側面から各社が取り扱っていますが実際には労働関連法規による制限も受けます。
本書では個人情報のみならず、情報管理全般を取り上げていますがHRテック領域に関する記述に関して取り上げます。
採用プロセスにおいては
マッチングサービスは、人材を実際に先行するかの判断をあくまでサービスを利用する企業に委ね、サービスを提供するHRテック企業は「情報提供」を行っているにすぎないという立て付けにすることが必要(P122)
という指摘に対してAIやレコメンドの精度が向上するに伴い、情報提供なのか判断なのかは相対的であることから慎重に検討する必要があるとしている。
職業安定法改正の前提となった検討会においてレコメンドなどについても取り上げてはいます。この中では複数の選択条件から適切なものを表示するにとどまり応募(選考)自体を担当者が希望すればできる仕組みを前提としているあたりについて考察しても良かったかもしれません。
また、応募者のSNSなどからの情報取得について
応募者のSNSへの投稿を継続的に追跡する試み(アカウント・トラッキングシステム)は正面から職安法に違反する可能性があり、適法かつ適正な基準が示されるまでは同意なしに応募者の情報として収集することを職安法適法と解することは困難である
という指摘についても、応募者から任意に同意を取得するという解決方法を示していますが、現実的に多くの会社の採用担当者がSNSをチェックしているであろう現状からすると「適法かつ公正」な手段について解釈上の限界を検討しても良かったのではないでしょうか。
具体的には、適法かつ公正な手段の一つとして「本人の同意のもとで本人以外のものから収集するなど」と例示しているにすぎません。個人情報の取得については本来本人の同意がない場合でも適法とされるため、その観点でどこまでが適法なのか(例えばリファレンスチェック(在籍企業での評判など))が知りたいところではあります。
AI・HRテック対応という表題になってはいるため、人事領域の情報管理をまとめた中で最新のHRテックのテーマも取り扱ってはいますが、新しい論点について考え方を示すというよりも第三者の見解を引用するという部分が多かったのが残念なところです。
法律事務所の立場上、グレーゾーンを踏み込むことは難しいということは理解しています。
ただ、このHRテック領域については専門的な法律家がいないためグレーゾーンをどのように攻めていくのかを他の領域を参考に対応しなければならないのかもしれません。