日本労働弁護団に所属し残業代計算ソフト「給与第一」の開発者でもある筆者が、労働基準法第37条について解説するという前評判なので購入して拝読してみました。
【書評】
労働者側の代理人として活動されている筆者のため、労働者側で弁護士が受任するにあたって必要な情報をまとめた本という位置づけになります。
そのため、使用者側でどう対応するかという予防法務の観点ではなく、労働者側の代理人弁護士として検討する視点をベースに論述されています。
労働基準法37条に関して詳細に取り上げているようにも見えますが、
- 記載が難解であり初学者には理解しにくいこと
- 各判例を知っている又は合わせて読むことが前提となっており、本書を拝読するだけでは全体の理解として不十分であること
には注意が必要になります。
固定残業手当として一定時間の残業代相当額をを支給している企業が増えていますが、固定残業手当が適法に認められるために①手当そのものが時間が時間見合いのものなのか(例えば営業手当など)②職種加算などで複数の意味を有する手当になっていないか、といった裁判になったときのメルクマールについては規則類を見直す場合に参考になります。
社会保険労務士を中心に労働時間管理完全実務ハンドブックが労働時間の管理に関する実務では定番書として利用されています。
訴訟に関しては対象外ではありますが、労働時間管理をちゃんとやるのであれば本書よりもこちらを買ったほうが良いかもしれないと強く思いました。