相続法が改正され本年から段階的に施行されていきます。
相続法が改正されるから概要を勉強しようと思いましたが、そもそも実務を全く知らない(一般的な相談も受けたことがない)ので、こちらの本を購入して拝読させていただきました。
【書評】
「相続道の歩き方」と銘打っていますが、本書では、相続の各段階(生前・相続開始後)において法律上の制度とその使われ方について、一実務家の視点で解説しています。
そのため、最低限の判例や理論にも触れていますが、中心は相続の紛争にかかわる実務家としての経験を述べています。
例えば
- 自筆証書遺言について「自分の死後はどうなろうととにかく遺言書作成の費用だけを可能な限り抑えたい」というような場合にのみコスト上のメリットがあること
- せっかく遺言をしたとしても「相続争いというものは、起こるときには起こります」といった遺言が相続での争いを避ける方法とは限らないこと
- 相続関係説明図は、ことあるごとに複数が確認するので間違ってないだろうと思っても、間違っていることがあるので確認すべき
- 相続に関する限定承認や財産分離が実務的には期間が短く使いにくいのでほぼ使われていないこと
など、それぞれについて素直な見解が述べられています。
個人的には相続関連は全く相談を受けたことがないので知らなかったのですが限定承認や財産分離って使われてないということを初めて知りました(確かに実務家向けの書籍で拝見しないのですが、問題意識がなかった…)。
また、遺留分の計算の時に、相続分の半分という説明をしたことがあるのですが、まさか遺留分合計額を算出しその後法定相続分に乗じて計算するんですね…
小ネタも多いのですが、理論や書式については代表的な本がありますが、相続案件について実務的にどうやっているんだろうと悩む若手や相続案件に取り組みたい場合においては大変参考になると思います。