昨年は海外への出張機会があるなど海外案件への関与が増えてきました。
もともと現職が採用時に英語能力をMustにしていなかったので、海外案件が生じる都度何とかしてましたが、今後のことを考えると今年の一つのテーマになります。
そこで、昨年購入した本のうち、英語ということで犬猿して飾っておいた本書を拝読しました。
【書評】
本書は、三菱商事の法務部に勤務する筆者の経験に基づき、契約交渉の現場で感じた又はトラブルなどを通じて学んだ契約実務を伝えることを主な目的としています。
具体的には
- 海外へ進出しようとする企業における契約(売買契約・代理店契約・合弁契約)において、どのような事態(リスク)が想定できるのかという点を考え、各規定の意味を考えさせること
- 契約において頻出(と感じる)用語を50取り上げて、どのようなニュアンス(考え方)であるのか、例えば、provided,however,thatは「ただし」という意味ではあるものの原則と例外の境界であり注意が必要だったり、notwithstandeing anything to the contraryは他の部分よりも優先されるという宣言なので特に注意が必要など具体的なテクニックが記載されていること
- 契約書の解説本だと、きれいな英文契約を掲げることも多いですが、本書ではあえて問題があるものを取り上げ、どのような課題があるのかを解説していること(第5章)
- 交渉の現場において生じることをコラム形式で各所に散らばせており、経験が浅くても具体的にイメージすることができること、又一定の経験を積んだからこそ日常に生かせるアドバイスになっていること
あたりが英文契約を勉強しようとしている者については大変参考になります。
個人的にはhere+前置詞=前置詞 this agreementと置き換えるというのは、意識して読んでませんでしたが諸学者には分かりやすい説明だと思いました。
また、担当者の心構えとして
- 契約上想定されていないトラブルが生じたときに契約の不備と片付けるのではなく、契約時の担当者の力量不足と考えるべきであること
- 英文契約を理解するためには、精緻に読む努力を続けることとCut & Paste出来るように良い参考例をたくさん保有すべきであること
- 想定されるリスクが契約上記載されていれば、それはコントロールできるリスクであるので慌てる必要がないこと
については日常的に契約交渉を行う立場として肝に銘じておきたいと思いました。