RKの備忘録

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【書庫】「M&A、ベンチャー投資における知的財産デュー・デリジェンス」(崎地康文)

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以前は知的財産といっても商標とコンテンツ(著作権)ぐらいでしたので、中小企業やベンチャー企業のM&Aのデューデリジェンスではあまり優先順位が高くなかったと思います。

ただ最近では知的財産権の保護のために、早期から特許などに取り組むベンチャーも増えていますがあまり類書がないので購入して拝読しました。

 

【書評】

「M&A、ベンチャー投資」と銘打っていますが知的財産権に関する基礎的な内容(考え方・契約など)がまとめられており、投資事業の担当者が読むには大変いい書籍だと思います。

 

多くのことを学びましたがソフトウェア関連に関する記述についてはシンプルではありますが明快で分かりやすいです。

特に最近増えているSaaSモデルのサービスについて、

  • 物(記録媒体)にソフトウェアを記録するのと異なり、オブジェクトコードそのものが開示されないためリバースエンジニアリングすることができず事実上の保護・法律上の保護が付与されていること
  • SaaSモデルにおいては、ソースコードなどの情報の開示が求められる特許よりも営業秘密として保護するほうが好ましい場合が多く、特許についてはインターフェースや機能など利用者が一見してわかる範囲が好ましい

などとソフトウェアのプログラム発明について、その範囲と保護の方針について触れられています。

 

また全体の中では記述が少ないデューデリジェンスについては、特許庁が公表しているガイドラインは、実務において確認しないような項目や資料が列挙されているとしておおむね次の方法を推奨しています。

  • 知的財産の管理体制や方針を確認する
  • 調査範囲(重要性では絞り込みができないので基本は全部)
  • 対象会社からのリストの受領(加工することがあるのでExcelファイルでもらうこと)
  • 権利状態の把握(担保などは原簿を確認しないとわからない)

こうやって書いてみるとDDの基本といえば基本ですが、新しい分野に取り組もうとすると複雑に考えるのでシンプルに考える思考は重要なんですね。

 

知的財産に関係してよく取り扱う秘密保持契約書・知的財産権の譲渡契約書・ライセンス契約書・共同研究契約書・資金調達・ベンチャー投資など、知的財産権のみならず契約一般としても十分読みごたえがあります。

投資事業部門にぜひ1冊と思える大変いい書籍でした。

M&A、ベンチャー投資における知的財産デュー・デリジェンス

M&A、ベンチャー投資における知的財産デュー・デリジェンス