ブランド名や商品名などで利用されている商標ですが、商標法の基本書といえる本があまりなく、文系でも活躍ができる分野にもかかわらず法務担当者からすれば知っているようで知らない分野でした。
また、書籍としては新商標教室が定評がありますが改訂がされておらず古いという課題もあります(とはいえ読むべき本だとは思います)。
【書評】
企業から相談を受ける弁護士向けに書かれた本ですが、企業で商品名に関する相談を受ける法務担当者であれば全ての担当者が目を通しておくべき本だと思います。
理由として主要なところとして
- 商品名検討から商品として対外的に公表されていく流れに従ってQ&Aが構成されており、かつ場面が切り分けられているので他の書籍であるモヤモヤ感(登録時の類似性と侵害の類似性が同じなのかなど)について明確に理解できること
- 商標を中心にしているものの「商品名」の保護という視点で書かれているので商標の普通名詞化の防止や侵害の差し止めなどの対応にも触れられていること
- 弁理士の方が多数参加していることから類似性の高い商標がすでに登録されている場合のアサインバックや不使用取消審判申立等の実務上の方法について詳しく触れられていること(意外と弁護士は詳しくないので)
というところがあげられます。
特に普通名詞化の防止については、商品名が有名になればなるほど問題になり、例えば「エレベーター」や「正露丸」など特定の商品ではなく商品群を指す言葉になっています。これを防ぐために®を付加する、「○○は△△の登録商標です」と明記するなど地道な努力が必要のようです。
個人的には、統合商標(文字とロゴを組み合わせたもの)、二段商標(読み方と文字(漢字・英文字)を上下に併記する)について実務では使われていますが、法律のみの解説だと取り上げられないこともあります。
意外と勘違いしていることも多いので、この部分については読む価値が高いと思いました。
法務担当者の経験のためにも「商品名」について担当部門から相談を受けた際には、本書の注意に従って必要な事項を検討してから弁護士(弁理士)に相談してみても良いのではないでしょうか。
東弁協叢書 Q&A商標法律相談の基本?商品名検討からプロモーションまで?
- 作者: 中村合同特許法律事務所
- 出版社/メーカー: 第一法規
- 発売日: 2019/02/09
- メディア: 単行本
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