コーポレートガバナンスコードの改定により、独立社外取締役の重要性と任意の指名・報酬委員会設置が要請されています。
指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社は法定されているので最低限の知識は会社法の条文・書籍を読めば得ることができます。
他方で、任意の氏名・報酬委員会は各社ごとに設計することが求められますが、全く手探りの中で今後任意の委員会を検討していかざる得ないので、現時点では唯一任意の氏名報酬委員会に関する書籍を購入していました。
【書評】
2016年10月に出版された初版の改訂版になりますが、改訂においてはコーポレートガバナンスコードにおける次の変更が大きな影響を与えています。
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
コーポレートガバナンスコード補充原則4-10① 下線部追加
初代コーポレートガバナンスコードは、諮問委員会の設置まで求めていませんでしたが、改定により、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していないことを条件として独立性の高い委員会の設置を求めています。
発行会社とすると設置しなくても説明することで義務を果たすことが可能ですが、長期的には独立社外取締役の重要性が高まる中では監査役会設置会社においては任意の氏名報酬委員会がスタンダードになっていくものと思われます。
ただ、コーポレートガバナンスコードに書かれているから、とりあえず指名報酬委員会を諮問機関として設置しておこうという会社もあり得ますが結果としてコンプライとしては不十分になってきます。
本書は、実質的な意味を持つ任意の指名報酬委員会を設置するにあたって
- 諮問機関に対して執行側がどのように関与するべきか(例えば人事案や報酬案を提示することも独立性に影響がないのかなど)
- 諮問機関の結論をどこまで尊重すべきなのか(異なる結論を取るためには相応の合理性が必要となる)
- 諮問機関の参加者に取締役以外を加えることが可能なのか(取締役会が委任する業務の範囲とも関係する)
- 年間の想定されるスケジュール(大体年5回開催予定)
などが取り上げられており、外部にはなかなか公開されない任意の指名報酬委員会に関する取組や会社法上の整理を知ることができます。
個人的には、今後に向けての知識整理など大変参考になりましたが、既に実務を取り扱っている方からすれば各種セミナーなどで情報を持っているわけなので改めて購入する必要まではないと思います。