RKの備忘録

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【書庫】「M&Aの契約実務(第2版)」(中央経済社)

今年はM&Aに関する書籍を多数購入し拝見しましたが、M&Aの契約に関する書籍の定番である「M&Aの契約実務」が改訂されました。

9月に購入したもののなかなか読む時間を取ることができていませんでしたが、年末年始の休暇に合わせて読みました。

 

【書評】

本書は2010年に初版が出版されてから8年が経過していたため、改訂版の出版が待たれていたM&A契約に関する基本書的な存在です。

 

本書では、前半でM&Aに関する各スキームの注意点(独占禁止法・金商法など)について取り上げたのちに、後半部分で株式譲渡契約について条項ごとに解説しています。

 

本書が基本書といわれるゆえんは

  • 各条項について条項を規定する背景やカバーできる範囲(条項ごとの整理)を示しており、単にひな形の意味を理解するのではなく株式譲渡契約を通じて各条項の本質的な意味を理解することができる。
  • M&Aにおいて特有の考え方(表明保証や前提条件)に関して詳しく解説されており、当然の前提として契約書に書かれていることについて、行間を埋めることができる。
  • 一般条項についてもM&Aの本来の義務(株式譲渡と代金の支払い)と同じ構成で書かれており、一般条項自体の勉強になる。

というところでしょうか。

 

大変勉強になりましたが、知っているようで意外と誤解していた部分もあり

  • 準拠法において「抵触法を除き」という記載をすることがありますが、準拠法を日本法に指定した場合において。法の適用に関する通則法により準拠法が決まらないために措置であること(手続法は当事者の合意によって準拠法を決められないのが通説です)
  • 表明保証における当事者に関する記載は、仮に真実ではなく違反が生じた場合には契約そのものの効力(権利能力なきものが主体であることはできない)ので実効性は乏しく、履歴全部事項証明書(アメリカだとCertification of Good Standingで代用を検討)などにより確認しておく必要があること
  • 契約日からクロージングまでに発生した表明保証違反がクロージング時までに判明したことによりクロージングを見送った場合には表明保証に関する補償の対象とならない(契約時の表明保証について違反がないため)こと

など意外と知ってる風で細かく知らないことがわかりました…

 

M&Aについては扱う書籍も増えたことから初版が出た当時よりも相対的に地位は下がっているのではないかと思ったりもします。

ただ、各法律による規制や会社法に関する書籍はあっても、株式譲渡契約のみに限定して契約条項をここまで詳しく解説しているものが意外と少ない印象なので今後もスタンダードテキストとして存在していくのではないでしょうか。

民法改正についても触れられていますが、突っ込んだ解説がされていない部分については仕方がない部分もありますが改訂スパンが長い書籍なだけにちょっと残念です。

M&Aの契約実務(第2版)

M&Aの契約実務(第2版)