毎年年末になると中小企業庁から下請取引の適正化に関する要請を受けています。
幸いなことに現職では下請取引が限られるほどなのでそこまで意識していないのですが、下請法に関する相談を受けることもあります。
下請法に関しては「優越的地位濫用規制と下請法の解析と分析(第2版)」という代表的な本や公正取引委員会から出されているマニュアルなどがあるのですが、理解するという側面ではなかなか難解な印象を受けていました。
そのなかで、2017年11月にNBLでの連載をまとめる形で本書が発売されました。
本書の特徴としては、中小企業の発注担当者や下請業者が読んで理解できることを目的としていることから、章立てに工夫があります。
条文順ではなく、発注・納品・代金支払いという取引の流れに沿って記述されていますが、それも基本的な具体例をベースに解説しています。
とはいえ単に分かりやすくするために必要な情報を省略するということはなく
①下請法の対象となる取引か
・発注者、受注者の資本金要件の検討
・取引が条文上のどの取引に該当するのか(かつ類型)
②下請法の対象となる取引における問題点
・返品や受領拒否
・支払遅延や減額
という下請法の検討にあたり必要な順序で整理してあるため基本的な思考過程を学ぶことにも最適であると感じました。
特に支払遅延においては、納品日から60日以内の支払を求められていますが①末締めの翌々月末払い②検収日ベースで締め日を設定するなど制度的な支払遅延はあり得るので要注意と感じました。
支払期限について末締めの翌々月末払いの企業はあると思うんですけど、こちらは取引先(下請法対象か否か)によって使い分けているのかと別の意味で関心がわいてきました。
また、知らなかったのですが、納品日が下請け業者が頑張って前倒しになった場合には、その日から支払期限の起算日が始まるので契約で定める支払期限だと60日を超えるととがあるということは初めて知りました。
契約で定めた支払ルールで支払うために仮受領という制度を運用しているような法人もあるようなので、こちらは念のために年明けに見直しをしようと心に決めました(実際出来るだけの時間が確保できるかわかりませんが。)
この本を読んでから公正取引員会のマニュアルなどに進むという意味では「はじめて学ぶ」というのは正しいネーミングだなぁと感じました。