資金決済に絡む新規事業のご相談を頂くため、資金決済法について勉強し直さないとなぁと思っていたところ、「電子マネー」という部分にひかれて購入いたしました。
【書評】
支払というと例えば手形や小切手など法制度を軸に組み立てられている書籍が多い中で、「支払手段」に軸足を置いて解説を加えていくちょっと変わった書籍になります。
個人的な感想としては
- これまでは、どの時点で決済完了が完了するのか(finality)という視点はこれまであまりなく、民法が定める「弁済」の概念をふわっと認識していました。
- 電子マネーにおいては、クレジットカードのように発行主体と運営会社が分かれており、発行主体は入金による電子マネーの発行、運営会社が加盟店から電子マネーを買取るというスキームであることを初めて知りました…
- 電子マネーでの支払いが電子データによる代物弁済に該当するそうです(電子マネー利用規約)。
という部分について新たな気付きになりました。
他方で教科書にも利用されているようですが、手形・小切手に関する記載が半分程度を占めており、新しい支払方法に関する記載はそこまで多くないです。
また、理論と実務の橋渡しを考えて、各支払方法において理論を簡単に解説したのちに実務的視点での解説を加えています。
理論面を知っている人においては、その差が一度に分かるという意味で良いのですが、理論的な内容が理解できない段階で実務の取扱いが出てくると逆に混乱するのではないかなという印象を受けました。
個人的な納得感は大きいのですが、決済完了性(finality)の問題としてで説明する部分も見られましたがあまり一般的な内容ではなく入門書として本書を読み他の書籍を調べる場合には混乱するのではと思いました。
実務で取り扱わない限り仕事をする中でいまさら手形小切手法の本を一冊読むということもないのでその意味では手形小切手の実務を知ることができて良いかもしれません。