最近は契約書のレビューを行う機会も減ってきたことから、久しぶりに対応する契約書については以前ほど勘が働く亡くなってきました…
そのため、久しぶりに契約書に関する本をと思って探していましたが、民法改正対応もありちょうど改定前の状況...
その中で、民法改正にも対応していてビジネスロージャーナルのブックレビューで評判がよさそうだった「現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」を購入してみました。
【書評】
まず総論において各契約に共通する条項の解説と注意点をとりあげています。
- 解除については民法改正で帰責性の要件が不要になるため、契約書上、「債務者の帰責性が必要である」ことを設定するというのは忘れそうな影響なのでひな形に早い時期に追加しておいた方がよさそう
- 民法が改正されることにより瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わるとともに特定物(物の個性に着目した取引)以外にも適用されることになります。そのため、これまで瑕疵担保があまり問題にならない類型においても、責任の限定を追加しておくことが必要になりそうですね。。
- 契約不適合責任と表明保証の関係について記載している文献は初めて拝見しましたが、契約不適合責任が損害賠償や修補責任を定めていることから表明保証の機能の一部をカバーするのではないかという見解はそれなりに説得力がありそう(ただし、筆者も表明保証と契約不適合責任は厳密には異なるので両方を明記するべきという立場です)
その後、10種類の契約について取り上げていますが本書の特徴としては
- 各契約書について契約書作成マニュアルとして、①契約書パターンの選択(契約の分量・当事者(債権債務者ごとに選択すべき規定))②契約に関する情報の記入③契約書チェックポイント④交渉の落としどころを記載しており、契約作成のマニュアル化において利用できること
- 債権者・債務者のそれぞれの視点から自己に有利な規定への修正を記載しており、他社ひな形の契約書をレビューするにあたり自社の立場をベースに検討するにあたり参考規定として有益
- ソフトウェアライセンスやクラウドサービス利用約款など最近増加している取引類型について各当事者の立場で修正の方向性を検討できること
というのがあげられます。
各当事者の立場からのレビュー内容な作成マニュアルなど契約書に関する解説書としてはかなり優秀な書籍だと思いました。
今後、契約書についての書籍の紹介を求められた場合には第一候補にしようと思います。
現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方 (Business Law Handbook)
- 作者: 長?佑志,長?威志,母壁明日香
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2017/06/24
- メディア: 単行本
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