最近は知的財産権に関する相談もありますが、なかなか専門的に勉強したことがないことから断片的な知識で綱渡り的に乗り切ってきました。
その中でも特許法は、理系が苦手で文系の仕事をしている者にとっては技術的な話が出てくるのでなかなか取り組みにくい分野です。
年末年始の休みに入る直前に概説書として定評のある高林先生の標準特許法の改訂版が発売されましたので購入して勉強することにしました。
「標準特許法」の特徴として
- 裁判官出身の著者が早稲田大学での講義でのレジュメを纏めて改訂し書籍にしたものである
- 法律の勉強をちょっとした者であれば理解できるレベル設定でいわゆる入門書の位置づけである
- 論点がある部分でも敢えて学説などについて詳細な論述はしていない
- 理系的な知識がなくても理解できるようにクレームなどに関する部分は最小限にしている
といった文系の特許法初心者にとって読み進めやすい内容になっています。
とはいえ、元裁判官の著者が書かれていることから
- 特許の要件など法律の要件については要件ごとに検討しており基本書に進んだ場合でも本書の理解の延長で知識を膨らますことが可能なこと
- 判例のみならず下級審の裁判例についても多数の引用があることから、一つ一つ確認していくことで判例の十分な知識をえることも可能
- 特許関係で重要な知財高裁や最高裁の判断については最新のものまでアップデートされている
といった初心者から中級者への橋渡しも十分な内容になっています。
ただ、初心者目線であえてマイナス部分も掲げておくと
- 用語の定義について法律や判例のものをそのまま掲げているが初心者としては具体的にイメージできない部分もある(そもそも特許法の「発明」という概念が分かりにくいのは著者の責任ではないですが…)
- 特許関連の実務で問題となる行政訴訟(第5章)・侵害への対応(第6章)についての記述が分かりにくい(ただ、損害の推定の部分については大変参考になりました)
- 著作権法や商標法などとの比較をしているものの、そもそも他の法律の理解がないので混乱する(個人的には大変参考になりました)
という部分でしょうか。
知的財産関係は改正の多いこともあり、改訂も多く本書は3年に1度の定期アップデートになります。
ただ、あとがきにもあるようにこの間の法改正は職務発明に関するものがメインであり、むしろ注目はこの数年相次いだ知財高裁の判決になります。
そういう意味では最新の判例・裁判例も反映されているのは勉強するにあたり大変助かりました。
実務系のハウツー本は数多くありますが、法律として知的財産法について勉強を始めるのであれば、特許法について迷ったらまずはこの概説書で勉強してというのが良いのかもしれません。