昔からM&Aに関わってきましたが、そのその身に着けた断片的な知識のみで専門的に勉強してきませんでした。
契約書も日常的な取引において使わないものが一定数あるなかで、そろそろ勉強しておいた方が良いだろうということでM&A契約に関する書籍を購入しました。
(書評)
本書は四大法律事務所の一つである森・濱田松本法律事務所においてM&A実務に10年以上かかわってきたパートナー弁護士の先生が執筆されています。
- 株式譲渡契約・事業譲渡契約について、モデル条項を掲載の上で理論的・実務的な解説を加えています。
- 株式譲渡契約において①株式譲渡契約の価格調整メカニズム②表明保証③誓約次項④損害賠償(含む特別補償)といった項目について逐条的に解説しています。
- M&Aにおいて事後的な価格調整(基準日からの調整・エクスロー)が行われることがありますが、この価格調整が株式価格に関する減額であることを明記しておかないと税務上の処理が困ることは初めて知りました。
- 最近アーンアウト条項についても議論を聞くようになりましたが、指標を設定することが難しいことも理解できました(適時開示の内容からはマネックスグループのコインチェック買収にもアーンアウト条項があるようです)。
- 買主側が負担する独占禁止法のクリアランスやその他業法上の許認可について、買主側で断念した場合の違約金を定めておく方法が欧米では一般的に存在している。
- 買主が知っている内容については売主の表明保証の対象とならない可能性があり、当該部分についてはカーブアウトの上で特別補償として補償を設定しておくことが必要。特別補償は特定した項目についてのリスクヘッジに利用される。
- 日本国内の契約だとなんだかんだで当事者間の信頼に基づき明確に定めないこともある(「重大な影響」など)
- 事業譲渡の場面では、切り出す資産(事業)の特定について工夫が必要。
- 売主に依存している運営形態の対象会社(例えばシステム提供などを受けている)の場合には、付随して一定期間のシステム利用や商品の提供を受けられることを条件交渉に入れておくひつようがある。
各条項以上に、その背景について解説されており、書きつくせないほど勉強となりました。M&Aについては欧米法の概念が持ち込まれていますが引き続き勉強していかないとなぁと強く思いました。