今月号のビジネス法務は先月と異なり、購入から10日程度で読み終えることができました。
2017年12月号の特集は
- 条文作成の技法
- 「相談役・顧問制度」の見直し
- 匿名加工・第三者提供の実務
の3本立てでした。
1.条文作成の技法
社内規程の作成や見直しについて、社内で作成する場合の注意点や法律事務所へ依頼する際に必要な内容などを解説しています。
個人的には、規程類の整合性をとるのがなかなか大変なので、そのあたりは今後の課題だと思ってます。
2.「相談役・顧問制度」の見直し
コーポレートガバナンスに関する報告書の記載概要が改訂され、代表取締役・CEOなどの限られた経営者について退任後に会社から相談役・顧問等に就任する場合記載が必要になります。
東芝の粉飾決算などで取締役ではない相談役などの影響力が働いたと考えられている影響になります。
それについてガバナンスの観点から取り上げられていますが、注目なのは座談会で3社の担当者の発言になります。
それを踏まえて大杉先生も廃止ありきで議論してきたことを改める必要があるかもしれない旨の発言をしているように顧問や相談役が悪という単純な構図ではないですからね。
3.匿名加工・第三者提供の実務
個人情報の第三者提供・委託に関するQ&Aがあり、よくある部分について回答されていますが、拝見する中でガイドラインの内容と違うのではないのか(何らかの意図を省略している可能性はあります。)と感じる部分がありました。
クラウドサービスが「委託」に該当するのかどうかの判断について個人上保護委員会Q&Aを参照のうえで個人データを「取り扱わない」という部分について
海外クラウドが個人データを格納することが想定されているようなサービス(顧客名簿、勤怠管理等)であれば、取り扱うという評価は免れないものと考えられる
(ビジネス法務2017年12月号p90から引用)
としています。
ただ、当該Q&A原文は
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クラウドサービスの利用が、本人の同意が必要な第三者提供(法第 23 条第1項)又は委託(法第 23 条第5項第1号)に該当するかどうかは、保存している電子データに個人データが含まれているかどうかではなく、クラウドサービスを提供する事業者において個人データを取り扱うこととなっているのかどうかが判断の基準となります。
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と保存されている電子データの属性に注目していません。
そのため、文面通り読み取るかぎり、保存する情報が個人データであったとしても直ちに「委託」に該当しないものと考えられます。
個人データを格納したとしても「取り扱わない」場合というのが観念できるように思われます(最近のSaaS型のHRTechはこれを志向しているように思われます)。
ただ、どのような定めがあれば「取り扱わない」旨といえるのかが不明なため、念のため保存するデータの内容により「委託」として扱った方が安全であるという回答であれば納得感はあります。
(私も「取り扱わない」旨の規定を見たことがないので実際には「委託」というのが正しいのかもしれません。)
その他
広告マーケティング法において薬機法が取り上げられておりますが、有名な法律の割に普段使わないので初めて内容を確認しました。
また、知的財産権の取引について海外へロイヤリティを支払うときには外国企業の国内所得となり源泉徴収義務があるんですね(租税条約で免除されている場合が多いようですが。)