特別法の条文を読む機会が増える中で、民法などの一般法に関する知識を維持する方法がなかなか見つかりません...
民法改正がありますが、そもそもの民法の知識があやふやなので勉強しようと思って購入したのが「民事裁判実務の重要論点 基本原則権利の濫用編」になります。
民法の授業では、「信義則」「権利の濫用」を初期に学びますが条文とすると
と短くシンプルになっています。
その結果としてこの領域は判例・裁判例の積み重ねによって範囲が確定されてきたため条文だけ読んでも何もわかりません。
そのため、権利の濫用のみをまとめた本書のようなコンセプトの本が出版できるわけです。
本書の特徴としては
- 判例をベースにした設例をもとに、基本的な知識の確認と判例(裁判例)解説・学説の紹介の上で、各場面において権利の濫用の判断にあたり裁判所が考慮する要素となりうる「事実」を整理している。
- 裁判官が各設例への解説等を執筆しているため、過去の判例・裁判例などの事実をもとに実際に適用が難しいのではないかなど単なる要件論にとどまらず主張の認められやすさの目線を知ることができる
- 各設例ごとに参考文献が明示されており、本書で概要を理解してさらに詳しいところを探すといった方法が使える
というところが特徴になります。
また、内容としても債権法・家族法・会社法・労働法・訴訟手続きと各分野を取り上げており、企業法務を主に担当している場合でも、最後の手段として「権利の濫用」を検討するにあたり参考になります。
ただ、基本知識については知っていることを前提にスタートしているため、民法その他の法律について一定程度の知識がある方向け(はしがきにも弁護士向けとされています)になります。
調べる時間などを考えると一定以上の人には重宝されそうな本に感じました。
なお、初学者が読んでも何の話をしているのか分からず迷路に入ってしまう部分もあるので要注意です。。
個人的には、ロースクール生があてはめの事実を探すための手引きとして利用するなど使い方が結構ありそうな本なので蔵書としては一冊持っておいても良いかもしれません。
裁判官が説く民事裁判実務の重要論点[基本原則(権利の濫用)編]
- 作者: 加藤新太郎,小林康彦
- 出版社/メーカー: 第一法規株式会社
- 発売日: 2018/02/14
- メディア: 単行本
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