多くの事業所で派遣労働者を受け入れていますし、労働者派遣法事業の許可を受けているものの事業としては実質的に行っていないことから意外と条文すら読んだことがない労務・法務の担当者が多いのではないでしょうか。
私も労働者派遣法については、知っている感じでいましたが時間があるので一冊読んでみようと思って購入したのが「労働者派遣法」になります。
【書評】
本書の特徴としては
ということがあげられます。
労働者派遣については、2015年10月の改正法から
- 業務ごとに派遣就労可能な上限年数を決めていた制度を廃止
- 業務内容に限らず事業所単位での就業上限を3年とする(労使協定で3年間の延長可)
- 有期雇用契約の個人については組織単位で3年を上限とする
- 違法な派遣の場合に派遣先からの労働契約のみなし申込制度
ということは有名で多くの関係者が理解しているはずです。
ただ、質問を受けても意外とその趣旨などについては知らないので機械的に回答している場合が多いです。
本書は、労働者派遣法の概説書という立ち位置で執筆されており
- 各制度について立法趣旨に遡って解説を行っている。
- 派遣元・派遣労働者、派遣元・派遣先、派遣先・派遣労働者、の3つに分けて法律関係を整理している。
- 公法上の義務と私法上の義務に分けて記載し、公法上の義務が当事者間の契約にどのように影響するのかを明確にしている
- 労働者派遣法に関係する判例や裁判例について取り上げ、当時の法制度との差異や現行法制上での考え方について言及する
- 労働契約法、労働基準法との関係についても言及している
ということから、労働者派遣法についての基礎的な概念を学ぶ入門書としては適切な本になります。
労働者派遣事業を行っている会社であれば、本書のみでは不十分で要綱を読んだり業界団体の資料を見るなど必要になりますが、本書を読むと理解が深まるとは思います。