昨今労働法コンプライアンスが叫ばれていますが、依然と異なりM&Aにおいても人事労務DDは一つの分野として確立してきています。
そのなかで、法律事務所へ労務DDを実施を依頼することが多いのですが、時間との兼ね合いの中でスコープを絞らざるをえないため網羅性のあるものを探していました。
そんな中で、東京弁護士会労働法制特別委員会の委員の弁護士の先生が中心となって労働法務DDのポイントをまとめた本が出版されました。
本書の特徴として二部構成になっており
- 初めてM&Aに取り組む社内弁護士を中心に労務DDの実施の流れとその時の注意点をまとめている
- 労務DDのレポートのひな形をもとに、記載順に①問題となる項目②チェックすべき資料③具体的な対象会社への質問
という形で論じています。
既にM&Aに関する業務を複数回実施していますが参考になったのは
- 労務DDの各段階での失敗談
⇒ 質問の時間が足りなくなったこと
資料のどこに記述がいたのか探せない など
- 労務DDに関する各種ひな形
⇒ DDレポートやエグゼクティブサマリーなどを含めたひな形
について掲載した書籍はほかにないかも
- 労務DDにおいて調査しておくべき項目について網羅的にふれていること
労務の担当者が管轄しているのであまり接点がない分野
についてもチェックポイントとして触れている。
という点になります。
特に私が担当したM&Aにおいて、実施した労務DDで4大法律事務所でも検討していなかったポイントを網羅しているので網羅性はかなり高いと思います。
他方で、企業の担当者としてはコストと実施期間の管理という命題があります。
そのため、本書の中で本来確認しておくべき事項を認識した上で、どこまでということを考えないといけないかもしれないですね。
「M&A」とは題名にあるものの、はしがきにもあるように労務コンプライアンスが重要視される昨今の流れからは、自社の労務管理を見直す手段としてチェックリストを網羅的に利用してみると良いかもしれません。