最近のIT界隈では、クラウド型サービスやSaaSモデル(サブスクリプションモデル)でのビジネスが増加してきました。
そのため、知的財産権ではないものの使用権としてのライセンスを販売するモデルの契約書を見かけることが増えたのでライセンス契約を勉強するために購入してみました。
ライセンス契約の基本と書式は
- ライセンス契約の基本知識
- 契約条項の文例と解説
- 契約書ひな集
で構成されています。
ライセンス契約の基礎知識では、
- 個別分野の法令解釈については最低限にしています。
⇒ 特許法の分野で最近見かけるFRAND宣言とライセンス契約や
クリエイティブコモンズなど他の書籍では意外と見ない内容
を取り上げているところは参考になりました。
- 契約をめぐるトラブルを取り上げている
⇒ 広義でのライセンス契約である販売店契約やフランチャイズに
伴うトラブルやキャラクターの権利化などを取り上げています。
というところが特色になります。
専門知識がある人もライセンス契約を担当することになって初めて勉強する人にもわかりやすいバランスになっています。
契約条項の文例と解説では、条文ごとに解説を加える形で次の7つの契約ひな形を取り上げています。
①特許ライセンス契約
②特許クロスライセンス契約
③商標ライセンス契約
④フランチャイズ契約
⑤キャラクター商品化許諾契約
⑥パブリシティ商品化契約
⑦匿名加工情報利用契約
解説においては、単なる条項の意味合いだけではなく、公正取引委員会が公表しているガイドラインとの関係についても触れており、普段当該分野を取り扱っていなくても本解説のみでガイドラインにまで配慮した契約書を作成することができます。
民法改正にも触れており、債権譲渡禁止特約が相対効になることから、当該契約の債権譲渡については解除事由として解除条項に入れるべきではというのは今後の各種契約の課題になりそうです。
最後に解説はないものの
①ライセンスポリシー
②ソフトウェア使用許諾契約
③ネーミングライツ設定契約
④販売店契約
⑤技術移転契約
を取り上げています。ネーミングライツ設定契約については初めて契約条項を見かけたのでなかなか使うことはないものの今後見かけたらと思いました。
全体的に平易に記述されているためライセンス契約に詳しくなくても理解することが可能です。今後はまずこの本からということになるのでしょうか。
姉妹本に「業務委託契約の基本と書式」というのがあるようなのでそちらも購入してみようと思います。